2010年10月10日

後日譚 村上春樹と時々なんとやら

級友のじぶろう君が前回の記事に対して意見をくれて、その返信を書いているうちに新たな気づきがあったので引用しながら書いておく。

まず、村上春樹を槍玉に挙げて論じた前回の記事を要約すると
「現実はヤバイことになってんだ、他人事じゃない危機感を抱けよ。知ったような口を利いてても現実問題には対処できないんだ、ちゃんと考えて、そして行動しろ」という警鐘になる。そして、知ったような口を利く代表者として村上春樹を指摘した。それに対するじぶろう君の意見がこちらだ。

「(前略)熊はディスプレイの画面でリアルを語ろうとしている。それはまるでAVを見ながらオナニーをしてるやつが「セックスまじ気持ちいい」と言ってるようなものである。実際は違う。当たり前である。現実は実際に見聞きし、そして何より肌で感じなければならない。熊が知り得た情報のソースは存じ上げないが、実際に体感してない人間に恐怖心を持つことを叫ばれても、なかなか信じがたいし、病人にすら見えるものである。
(中略)
それではこのような状況をお前はスルーするのか、と言われるかもしれない。もちろん私はスルーしない。私が大事だと思うのは事実を正確に知ることである。それは単に政治的な背景だけでなく、民族的な背景やその地の人々の感情も共にしるべきだ。それはつまり個人をしるべきなんだと思う
そうしてようやくはじめに戻るわけだが、村上春樹についてである。村上春樹はねじ巻き鳥あたりから一貫してシステムに対するアンチテーゼを主張している。かれは別にのらりくらりとした主張をしているわけではない。また個人の側に立つという主張は、私には非常に共感できる。熊は村上春樹の独特の言い回しにつっかかりすぎて本質が見えていない。かれはシステムの首脳陣に対し、個人を見るように忠告したのである」(後略)(着色は熊りんが追加)


リアリティを叫んでるお前自体にリアリティがない、というじぶろうの意見は非常に身に染みるものだった。もしかしたら、読んだ多くの人が得た共通の感想たりえるかもしれない。俺はかく反論した。


偏った情報にだまされるなというのは、「知ったような口をきくやつは要らない」と主張する記事に表れる俺の思想にも合致する。
ただ必ずしも中庸な情報が適切な情報ではないのだと主張したい。
圧倒的な兵力が平然と人を蹂躙するという状況にあってアイデンティティも糞もない。個人個人を知るべきという意見には賛同するがそれはより犠牲者側を同情し理解するための手段であるべき。
なるほど実はこの意見は、強者=システムを徹底的に毛嫌いする村上春樹に似通う。再発見だ。)(後略)


最後に自分で認めてあるように、弱者全肯定という面で俺は村上春樹の『硬くて高い壁と、そこにぶつかって行く一個の卵があったとしたら、たとえ壁がどんなに正しくても、卵がどんなに間違っていたとしても、僕は卵の側に立つ』
という意見に見事に賛同しているのだった。
俺は矛盾を指摘されて崩壊している何とも情けない姿を晒しているのだけど、せっかく気づけたので反省の意味もこの記事に持たせられるだろう。

何故根底に通じるところがあるのに俺は村上春樹を徹底的に批判したのか?それはひとえに彼のやり方にある。
http://www.pandora.nu/pha/tools/spam/harukin.phpこんなものがあるぐらい彼は独特のニヒルな言い回しを使う。
それは見事な比喩になっていることもあるけれど、やっぱり読者に「分かったような気にさせる」機能が大きいように思う。
洒落たこと言うときって中身への注意が散漫にならないか?形に捉われすぎないか?
たとえばtwitterではみんな言葉遊びを呟きたがる。たいがい面白いし好きなんだが、たまに政治風刺をする人が出てくると俺はとたんに不快になる。そうやって語るもんにしちゃ駄目だよ、と。
知識と経験を有しながらそれを曲げて伝えているのだとしたら、俺の基準では更に憎いヤツになる。

それでも、本質的に意見を同じくするところがあるということはつまり、自分の意見に取り入れうる教材として村上春樹が使えるのだ。
これまた最近述べたばかりだけど知識があるのに内実の伴わない人への最良の態度は、情報として処理することにある。とりあえずリラックスしつつ、彼から学べるものを摂取しようではないか。

ひとまず俺は村上春樹作品を「ノルウェイの森」「海辺のカフカ」「1Q84」および短編しか読んだことがないので「風の歌を聴け」に始まる長編三部作からでも読んでみようと思ってる。

因みに現時点での彼への態度は、「嫌い」から「好きでも嫌いでもない、保留」に変更したばかりだ。

posted by 熊りん at 22:21| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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