昨日京大で行われた講演会に友人を誘って赴いた。
食料需給は実は何年間にもわたって関心を持ってるテーマだ。安全保障にも密接に関わる。
「北方水滸伝」という作品があって、反国家組織が王朝を倒そうと戦う話なのだが、
この組織の資金源は塩の密売による。塩は人間が生きていくのに不可欠なものだから、国はそれを管理するが、逆手にとって密売をすると莫大に儲けられるのだ。
俺たちの祖先が「知的」でないレベルの時代から食うことは常に最優先事項であったが、文明の発達でその事情は複雑化の一途を辿り、
そこに法とか経済とか、はたまた倫理とかが絡んできている。非常に大きなテーマだと思う。
農林水産省の幹部がこのテーマの元に講演を行ってくれるというので俄然興味が湧いて足を運んだ。
講演の内容を簡潔にまとめると
○豊作や凶作による食糧価格の変動は政治的動乱にも繋がる。今回のエジプトやリビアもそれ。
○食料の需要は高まっているが、品種改良(=理系的アプローチ)での増産には限界がある。
○遺伝子組み換え食物を普及させるとまだ増産が見込める。(しかしそうすると消費者は「量」か「安全」の選択を迫られるのではないか)
○日本の自給率が低い要因は米や野菜類でなく、畜産物。畜産が大規模化して、ブタやウシを食わせるために必要なトウモロコシや小麦の大部分を輸入している。それらの穀物はバイオエネルギーとしての使用が増えているため、価格が高騰中。
○日本は「自給率50%」を目標に、農家への補償や、米の飼料への転換などを計画中。農家の保護は環境保全にも繋がる。
いま話題のTPPについても少し触れられたがぶっちゃけ良く分からんかった。個人的に調べるつもり。
抱いた感想としては
●技術革新に食糧問題の解決を頼りすぎることは出来ない。
●豊作や凶作は人間が操作できないレベルで起る、これは諦めた上で考える必要がある。
●日本の「減反政策」は改めて大失敗。コメが余ったから減らした。しかしアメリカは小麦が余っても減らさず、燃料にする悲願を達成した。コメも燃料にできないのかなぁ? コメを飼料にするというのは一番必要な発想だと思った。
●世界レベルでの価格変動に、日本はほとんど要因として関わってない。アメリカやオーストラリアなどの資源大国と、多消費国の中国ばかりが挙がる。つまりこのままだと日本は振り回されるだけしか出来ないんじゃないの?
●食糧自給率50%達成が農水省の目標らしいが、それは
目的なのか結果なのか。つまり、50%という数字を達成することで、飢饉という有事への対応パターンが増える、とかなのか。それとも50%にしようという努力(農家への補償や品種改良や作物の転換)
から得られるものに意味があるのか。50%目標というのは単なる標語?
率直に言ってめちゃくちゃ真新しい発見はなかった。これには2つ理由があって、@俺がそこそこ高校課程の「地理」をやっていたから基本的に知っている話が多かった。
Aしかし専門的なことは何一つやってないから、突っ込んで深めることは出来なかった。
からである。
いまある知識の補強という感じだろうか。
さて、俺が問題視したのは、講演がひと段落してから行われた質疑応答タイムである。つづく。